この投稿は阿蘇西小学校の枳地区在住の生徒さん向けに毎年行っている地域体験活動用に筆者が作成した資料を公開しています。2020年6月26日現在加筆修正中です。
1-1 去年の学習を思い出してみよう
枳(げず)ってどんなところだろう?
- あそ山の麓(ふもと) にある。
- 草原(そうげん)がある。
- 田んぼがある。
ほかにはどんなところだと思う?皆で思いついたことを話し合ってみましょう。
1-2 今年の学習のポイントは・・・
- 地学(ちがく)・・・山や丘のかたち、火山活動、岩や火山灰
- 植物(しょくぶつ)・・・森のようす、ススキなどの野草
- 動物(どうぶつ)・・・草原に住む生き物
- 歴史(れきし)・・・山や草原の成り立ち
- 民俗学(みんぞくがく)・・・人と草原のかかわり、宗教
上のように、枳地区のことを考えると色々な学びにつながるんだということを知ってもらいたくてこの講座を準備しました。
1-3 人はみんな星のカケラでできている
※この1-3のパートは熊本学園大の新村先生の言葉をお借りしています。
ヒトのからだをつくっているものは何でしょうか?
想像してみると、骨・血・肉・かみの毛・ひふ・つめetc…とたくさん思いつきますね。
実はそれらを作っているのは、こんな「元素」と呼ばれる物質なのです。
酸素,炭素,水素,チッソ,カルシウム,リン, イオウetc…
これらの物質のうち「水素」は約150億年前の宇宙ができたときに生まれました。
残りの元素は、50億年前に爆発した惑星から生まれたとされています。
つまり人間の身体を構成する要素は宇宙を構成する物質からできています。ずっと辿っていくと、広い意味では「人」は家族みたいなものなのです。そう考えると他人に優しくなれるのではないでしょうか?
2-1 火山灰(かざんばい)ってイヤだよね
阿蘇に住んでいると悩まされるのが火山灰です。洗濯物が汚れたり、洗車したばかりの車が真っ黒になったり、呼吸が苦しくなったりと嫌なイメージの火山灰ですが、じゃあ火山から出てくるもので、何が火山灰か説明できますか?
実はこんな風に分けられています。
- 火砕物(テフラ)・・・火口からでてくる岩石の破片のこと
- 火砕岩・・・固まって岩になっている
- 火山礫(れき)・・・2~64 mm
- 火山灰・・・2mm以下
「降灰へのそなえ」という本に火山灰への対応がかいてあります!
https://dil-opac.bosai.go.jp/publication/pdf/prepare.pdf
2-2 実は世界の火山の10%が日本にあります!
地球の面積は、148,940,000 平方キロメートル
日本の面積は、377,972 平方キロメートル
世界の火山の数は約1500
日本の火山の数は約111
日本の面積は世界の陸地の免責の1%にも満たないのに、世界の火山の約7.4%が日本に集中しているのです。だから日本は火山大国と呼ばれるんですね。
2-3 今の阿蘇の地形ができた理由
私が子どもの頃は、阿蘇のカルデラを山の底辺と考えて計算すると、エベレストより高い山が阿蘇にあったと考えられていましたが、その後の研究で新事実が分かりました。学説が変わるという貴重な体験をすることができました。
約27万年前から4回のカルデラ噴火があり、約9万年前の噴火(Aso4と呼ばれています)の火砕流は山口県までとどいたという研究結果が発表されています。
実は阿蘇のカルデラの大きさは日本一ではないのですが、カルデラの中で人が暮らしているのは珍しいのです(日本一は屈斜路湖カルデラ)。
3-1 噴火には色々ある
ストロンボリ式噴火
- ねばりけの少ないマグマのしぶきが火口から吹き上げるような噴火(例:阿蘇)
ブルカノ式噴火
- ねばりけの強い溶岩の破片を遠くまでとばす、爆発という感じの噴火(例:桜島)
プリニー式噴火
- 柱のように立ちのぼる噴煙が大量の軽石とともに、成層圏まで噴き上げることもある。(南九州の縄文人絶滅の原因)
- 根子岳はこの噴火でできたので形が違う
ハワイ式噴火
- 溶岩がおだやかに噴き出して、だらだらと川のように流れ出すタイプの噴火
3-2 さて米塚はどの噴火だったでしょうか?
3-3 火山のメカニズムを実験してみよう
噴火のメカニズム
メントスコーラの実験
4-1 火山が作り出す岩
石橋が熊本で発達した理由は?
加工しやすい「凝灰岩」があった!
4-2 参考:阿蘇火山地質図
米塚火山の溶岩流/スコリア丘(Ko)約3,300年前
米塚が噴火して流れてきた溶岩が冷えて固まった
蛇の尾スコリア丘(J) 約4,100年前
米塚のように小さな火山で実は米塚より古く、赤水の地形も作った
扇状地堆積物(f)
枳のみんなが住んでいるところ
出典 https://gbank.gsj.jp/volcano/Act_Vol/aso/index.html
5-1 今のような草原になったのはいつ?
地層に含まれるSiO2(二酸化ケイ素)を調べると・・・
- ササの草原(約3.2~3万年前)
- 気候や火山活動で衰えたササ草原(約3~1.3万年前)
- ススキ草原(約1.3万年前~現在)へと移り変わっていることがわかりました。
- 森があったという証拠はありませんでした。
出典 http://www.ffpri-kys.affrc.go.jp/kysmr/data/mr0076k2.htm
5-2 草原が残っている理由
草原はほったらかしにしておくとどうなるでしょう?
正解は「ヤブ」化して森になるんです。
じゃあ、このきれいな阿蘇の景色が残っている理由は?
私たちのご先祖様が草原に牛馬を放牧し、野焼きをしたり採草して守ってきたからなんです。
くわしくはおじいちゃん・おばあちゃんや近所のお年寄りに話を聞いたり、阿蘇グリーンストックさんが作った草原ハンドブックを見てみましょう!
5-3 草原のススキはこんなにすごい
- 草原のススキは動物園でえさになっている!
- ススキを使った卒業証書があった!
- ススキを混ぜた野草堆肥が野菜にいい!
- 阿蘇のススキは全国のかやぶき屋根の材料になっている!
5-4 草原は実は生き物のすみかになっている
動物や植物をさがしながら歩こう!
イノシシ・鹿・猿・キジなどいろんな生き物が住んでいます。
実は草食で準絶滅危惧種の「カヤネズミ」も住んでいます。
5-5 草原を守るために
野焼きの大切さ
野焼きをするメリットは?
大人になったら野焼きにボランティアや牧野組合員として参加してみよう!